トランクショー大好き日本人に言いたいこと サルトリアはただのブランドじゃない

ナポリのサルトリアが日本でトランクショーをする。最近では全く珍しいことではなくなったけれど、これはある意味客のグレードが下がったことでもあると思う。

なぜか。

僕は別にトランクショー否定派ではないが、サルトリアに対する敬意は減っていると思うからだ。

昔、まだ新宿伊勢丹やストラスブルゴやその他色々な店がトランクショーを頻繁にやっていなかった頃、日本人はナポリまで服を仕立てに来ていたという。

それはナポリのサルトリアから聞いた話だ。

しかしトランクショーが日本で頻繁に開催されるようになってからは、新しくナポリへ来る日本人はほとんどいなくなった。

だけどそれで本当にいいのだろうか。

 

サルトリアは、ただのブランドではない。

ナポリのそれぞれのサルトリアにはそこにしかない雰囲気があり、そこの空気の中で対話をしながら作り上げるものこそがスミズーラだった。

サルトリアには職人たちの思い思いの家具とかオブジェとかが置いてあるし、絵も飾ってある。例えばサルトリアダルクオーレならば抽象画。アントニオパニコのアトリエは真っ赤なアトリエに古めかしい家具がエレガントだ。

そういうものを感じるからこそ、その服に意味があった。

 

それが今や日本のどこも同じような店の中で、とちゃちな商品棚に生地バンチを並べて、30分刻みでオーダーをしていく。

これで手にはいる服って、全く別物なんじゃないかと僕は思う。

それに、ナポリの職人を飛行機で呼びつけて、通訳を使ってオーダーをするって、ちょっとどうなんだろう。

もちろん金はたくさん払うのだからいいかもしれない。

だけどこの

「金を払うんだから」

っていうのが本当に日本人的なのだ。

努力して時間を作って、飛行機を乗り継いでナポリに行って。

地図でサルトリアを探して、やっとの思いでたどり着いて。

飛行機の中で覚えた片言のイタリア語を駆使してオーダーする。

そんな方が、よほど職人たちに敬意を払っているような気がする。

「金を払ってるんだから同じだろ」

と思いがちな人は、職人たちが

「同じ金額でスーツを作るなら、敬意を持った人にいいスーツを作ってやろう」

と思うことを忘れてはならない。

 

職人は人生をかけて仕事をしている。

トランクショーでオーダーが手軽になった時代だからこそ、それをわかったうえで敬意を払ってオーダーをしてほしい。

その手始めに

 

Benvenuto in Giappone

日本へようこそ

 

の一言くらい、握手をしながら言って損はないだろう。