客が馬鹿だと店はダメになる

最近、家の近くにあるショップに行ったのだが、この店はすっかりダメになっていた。

僕はこの店のオーナーを昔から知っていたし、この人のことはなかなか好きだったのだが、店は残念になっていたのだ。

もともとこの店は僕の普段書いているようなナポリ服やスーツの店ではないのだが、質の悪いものを一切おかずに、ちょっと珍しい服や一点ものに近い手間のかかったデザイン服を売る店だった。

最近着ていないのでなんという名前か忘れてしまったが、ここで買ったヌバックの肘当てつきのスコットランド製の手編みのセーターが良くて、かれこれ5年近く使っていた。

 

そんな店だったが、最近はそこらで売っているようなくだらない服ばかり、仕入れるようになってしまった。

「なんでこんなものにしたの?」

と聞くと、どうやら通信販売で購入後に値引きしてくる客、何度も着てから返品しろという客、買った1ヶ月も後に難癖をつけて返品する客、そういうのがあまりにも増えすぎたのだという。

希少ハンドメイドものの服など、一回に入荷する量はわずかだし、単価も高い。

そういうのが1ヶ月後に返品されてしまっては、仕入れに金を回せなくなってしまう。しかも返品されたものがひどい状態で売れなかったりすれば、もうまともに商売はできない。

しかし、そんな客が本当にいるのか、と聞くとどうやら驚くほど多いらしかった。

10人に1人くらいが、こういう客だという。

 

そういうわけでこの店は、安くて売れそうな商品をたくさん仕入れてたくさん売るショプになった。相変わらず変な客は多いが、客の数が増えて単価が安くなったので、問題なく商売ができているという。

馬鹿な客がいると店はダメになる。それを感じた瞬間だった。

この店は同じ看板で営業しているが、内容の変化を見れば以前の良かった店は廃業したのと同然だ。

せっかく他で手に入らないようなものを扱うショップを、10人に1人のくだらない客がダメにしてしまうのである。

お客様は神様の意識をどうにかしないと、本当に良いものや面白いものはどんどん手に入らなくなってしまう。