巨星墜つ、ティンダロ・デ・ルカ

このブログの存在を半ば忘れていた一昨日クローゼット整理しているとふと彼の服が目に留まった、また筆を執ろうと思わせたのは一人の男の死だった。

5月7日、ミラノの友人から彼の訃報が届けられた、その夜はとっておきのウィスキーを飲み彼の死を悼んだ。
その男の名は
ティンダロ デ ルカ(Tindaro De Luca)

イタリアの仕立てが好きな人なら彼の名を知らぬ者は居ないだろう、彼の服を1度は着てみたいと思わぬ者は居ないだろう。
好みはあれど道の辿り着く1つの到達点に立つ男であり、クラシックの極みだ。手仕事の臨界さえ感じさせる。

彼の仕立てる服は質実剛健、構築的でミラノと英国のエレガントさが香り、格と気品漂う服である。
強面で口調は物静かだが、話すとチャーミングでエレガントなミラネーゼだ。

T「君は結婚してるのか」
僕「いや、まだだよ」
T「じゃ、デートには私の作ったコートを着ていけ、嫁が3人は出来るぞ」

僕「今回はダブルを頼もうかな」
T「いいね、私のダブルはいいぞ、誰にも真似できない世界一のダブルだ、後悔はさせない」

体型が少し変わって手近な所で直した服を着ていった時は瞬時に気付かれ
T「私の服を他のヤツに直させるな、いつでも良いから持ってこい、永久保証だ」

近くに寄った際ナポリの服を着た友人を連れ寄った時に友人の服を見せてくれと手に取り
T「このおもちゃを捨てるゴミ箱はどこだ?笑、君もこういう感じの服が欲しいのか」
僕「何で?ナポリ嫌いなの?」
T「いや、軽い仕立てが好きなら出来るぞ、簡単だ、ただこういう感じの服は着るシーンも限られるし私は好きじゃない、良く見てみろ、仕事にもデートにも着れないだろ」
ちなみに友人が着ていたのはラベラサルトリアナポレターナ。

僕が氏の服は特別だと言ったところ
「何か仕掛けがあるわけじゃない、細かく丁寧な仕事を確実に積み重ねる、仕立て上がった時は大きな結果となるんだよ、それ以外に方法はない」
「1と1.1だ、例えば1着1000触れるなら100の差だ、それと昨日より今日更に良い仕事をし探求し進化する事だ、5年前に作ったそのジャケットより今回のこの服の方が良いだろう、何の仕事をしても同じじゃないか」

思い出せば切りがない。
日本でもストラスブルゴでトランクショーをしていたため仕立てたことがある人も居るだろう。最近会ったという知人に聞くと元気だったそうなので割と急死に近かったんじゃないかと思う、気骨な職人の彼は最後のその時まで鋏と糸を持ち職人のまま亡くなったのだろう。彼に仕立てて貰ったジャケット・スーツ・コートなど大切に着て行こうと思う、思い出深いサルトの1人である。

誰の何のためになってるかわからないブログ書き続けるって意外と大変だな。。。と思っていたところまた書こうと思った理由はレナート・チャルディ(Renato Ciardi)、ジャンニ・カンパーニャ(GIANNI CAMPAGNA)、そして今回亡くなったティンダロ・デ・ルカ(Tindaro De Luca)と昔から仕立てて貰っていたサルトたちがここ1年で相次いで亡くなっていく侘しさと、日本ではサルトリアがハイブランドと同様な受け取られ方をし使い捨てにされている現状と横行する嘘にやはり疑問があるからである。
だからもう少し真面目に書いてみようと思う、いつまで続くか分からないけど。こんな陰気なブログ待ってる人はいないか。。。