今のサルトリア・ソリートは買うべきじゃない

僕もサルトリア・ソリート(Sartoria Solito)は昔から好きで何度も作った事のあるサルトだ。

軽快さと独特のスタイルを持っていて何かをサラっと羽織りたいときに自然と手が伸びる、攻め気味なコンパクトなバランス感も好きだ。
ただ仕事着やフォーマルなどには全く相応しくないが。

ここ2~3年は相当忙しいようだ、ロンドン・NY・日本・香港などと勢力的に飛び回りトランクショーをしている。
父ジェンナーロ・ソリート(Gennaro Solito)は朝から晩まで工房に缶詰めの生粋の職人で、主に3代目で息子のルイージ(Luigi)がオーダーを取りに行っている。ルイージは商売人である。
香港のAttire Houseは全然取れなくてもうやめたんだっけかな、確かスタッフや身内分をあたかもとれたように㏋やSNSに載せてたな、家賃がキツイらしく今年初めに移転してたな、あそこは金払いも悪いし適当な事やってるから当然か。
日本でも南青山、骨董通りの外れにあるシャロン(Sharon)というセレクトショップで2015年だか16年からトランクショーを行っている、既製品(RTW)も扱ってるようだ、何故ソリートで既成なんだろう、良く見てみたいから行ってみようかな。本当にソリートの工房で作ってるのかなというか例え作ってたとしてもジェンナーロやメイン職人は大して携わってないのは確かだろう。それ何の意味があるのだろう。
その前は赤坂にあるテイラーアンドクロース(TAILOR&CLOTHS)というセレクトショップが2011年からたまにトランクショーを行っていた。その時はオーダー価格も多分シャロンよりも15~20万円近く安かったにもかかわらず、全然売れていなかったらしい。知名度は昔からあったから単純に広告戦略の問題だろうな。

話は戻って何故もう買うべきじゃないかっていうと、先日帰国した際に会った日本の友人が1年前に作ったというソリートを着ていて見せて貰ったが酷いもんだった。僕が最後に仕立てたのは5~6年前、元々縫製は甘い方だった、というか雑な方だった。だがこの友人の1年前にオーダーしたソリートはその雑さは更に増し、着た感じもソリートっぽさも消えていた。この縫いじゃスフォデラータなら長く着てる間にほつれるな。

気になってその場でナポリの友人に聞いたみたところ、ルイージが工房サイズを考えずオーダーを取れるだけ取りスペックオーバーになり一昨年だか昨年に一気に6~7人の職人を採り工房拡大を図り対応してるそうだ。ただでさえ職人が枯渇しているナポリ、イタリアで急募で雇った職人たちがどれほどのものなのだろうか、誰がどう考えてもそれがどうなのか馬鹿でも分かるだろう。

それがスティレラティーノやラルディーニのように工場製で作りや着心地なんてどうでもいいと度外視して作ってるものならそれでいいのかも知れない。だって誰が作っても大して変わらないから。

ただソリートは違うだろう、何に対してお金を払ってるか。
ジェンナーロを始め熟練の職人たちが何十年という尊い修行の先、万の仕立ての先に辿り着いた、皆が認めたナポリの実力派サルトリアのソリートだろう。ソリートっぽいデザインの服が欲しくてタグが付いてれば良いのなら買えば良いと思う。そのものの価値と価格の乖離が激しすぎる。ただこの現状は作ってる当人らは勿論のこと売ってるショップ側も当然解ってるのに、その場しのぎをして、客を馬鹿にして買わせている事が更に客を盲目な馬鹿にし衰退させる本末転倒の結果になると思う。本来なら価格を下げるべきだろう、でもそれをする人は誰もいないのも解ってる。

正直な話今のソリートは日本でのスミズーラ48万円、それ位の価値が妥当だと思う。それでもあまりおすすめしないけど。

同じサルトリアであったとしても良くなる事もあれば、悪くなる事もあるのは当然だろう。だってソリートにしろ、パニコにしろ、ピロッツィにしろ、若かりし頃から長い年月を掛け経験を積み腕を磨き良くなり、共に働いている職人たちも同様に熟練を迎え、工房自体が円熟し、好みはあるにしろそれぞれ最高だと称される一線を越える。そうたらしめたものを失ったり手広くする為に濃度を薄めればそれはもう似て非なるものなんじゃないの。それが今のソリートだと思う。
勿論あと10年経てば雇った職人たちも育つのかも知れない、でもその頃には流石にジェンナーロは作ってないだろうし、共に支えてきた熟練の職人たちももいないだろう、今より更に良くなってると考えるのは難しい。受注量を半減させ濃度を元に戻す事も考え難い。だから既成作ってブランドにしようとしてるのかなとも思う。
そんな細かい話はどうでもいいとして、単純に良くなくなったから高い金払って仕立てるのはやめた方が良いと思う。馬鹿だと思う。

しかもさ、気になって画像検索して調べたらシャロンのソリートは既成もオーダーも多分ラペルの幅広げてるね、しかも決め打ちで。日本人以外のはそうなってない。マジでいらん。意匠権というものが存在し保護されてる意味も解らないのかな。長年かけ作り上げたソリートの絶妙なバランスも センスも関係なしか、何も解らず買った客が可哀想、あとで後悔すると思う。客がそれに気付きオークションやどこぞの古着屋にソリートが投げ売りされる日は近いのかも知れない。

今のソリートならもっと良いサルトリアは沢山ある、同様の質でもっと良心的な価格のものある。また今度自分が良いと思うものを書いてみたいなと思う。