Sartoria Pirozzi サルトリア ピロッツィについて

何度も仕立てて貰った事があるお気に入りのサルトリアで、天気の良い日に着て、心地良い風を切って颯爽と歩きたくなる。

エッジの効いたラペルやフロントカット、綺麗に後ろに流れるカッタウェイが端正でカッコいい色気を醸し出してくれて、その鋭さの中にどこか温かみというか優しさがある。

軽く身体に吸い付くようなフィット感にも関わらず動いても身体に吸い付いたまま皺や歪みの出ない、着る人を美しくキリっと見せてくれる、そんなエレガントな服だ。
高度な技術という言葉良く合う。
全てが精巧で丁寧、上襟裏の処理などの独自の仕立て、細部まで綺麗に処理されている。スキがない。

ヌンツィオ ピロッツィ(Nunzio Pirozzi)と実弟フェリーチェ(Felice)や一族を中心に非常に高い技術の職人たちによって安定して営まれている。息子ドメニコ ピロッツィ(Domenico Pirozzi)がその技術と感性を受け継ぎ、オーダー会に世界を飛び回っている、中東なんかにも行っていたな。
ヌンツィオは朝から晩まで鋏を持つ、フェリーチェも朝から晩まで縫う。確か弟は10歳位下と言ってたから70歳位かな。

このサルトリアは家族経営で本当に皆人柄が良くて、工房に行くといつも暖かく迎えてくれる。
僕はヌンツィオのフィッティング好みで、もっぱらシングルをお願いしている。

ヌンツィオとドメニコは良く喧嘩してるけど本気だって事だから別に良いし、息子のいない時にドメニコを褒めると本当に嬉しそうな笑顔をする。
職人の親子とはそんなものなのだろうな。

ここは珍しくパンツも自分たちで作っている、それがまた美しいシルエットが非常に良く足捌きも良い。
ナポリでもパンツは作ってないところが多い、日本でもチッチオやカブトやラファニエロなどを始め作ってないところが多い、カットだけで縫製は外注。
シャツも中々良い、自分たちのスーツに合うシャツを作ってるんだろうな。
ナポリでもサルトリアの継承問題が課題だが、ピロッツィに関しては技術の純度を保ったまま継続する為に大分前からシステムを構築し人材育成に力を入れて来ている、ドメニコの娘がジュージィがシャツ、甥のマルコがジャケット、勿論パンツ職人などそれぞれがプロフェッショナルとなるべく修行をしている。
パスクァーレ ソレンティーノ(Pasquale Sorrentino)から繋がる技術を独自に進化させ、次の代、更に次の代へと繋いで行く、伝統とは何か、そのサルトリアが生き続けていくという事はどういう事かという1つの答えがここにはあるのかも知れないと思う。

ドメニコは最近日本でも良く売れている事をちゃかして聞くと、真面目に売れている事は嬉しいが工房はそんなに大きくないし、良いクオリティを保ち続けるのは本当に大変だ、職人も簡単には増やせないし育成に時間も掛かると良く言っている。
そして自分たちの仕立てた服を着てもらって、満足してもらい幸せな気持ちになってくれたら本当に幸せだ、と言っている。
これも父ヌンツィオから受け継がれた大事なものなのだろう。

サルトの中には名声を得ると多少なりとも傲慢になってしまう人もいるが、ピロッツィはそうではないし安心して長く付き合って行けるサルトリアだと思う。

ただヌンツィオもたまに日本などに行っているというが、彼だけではなく高齢なサルトに大きな負担を掛けて削っているのは誰の目から見ても明らかだろうし、ジョヴァンナなど家族は余り乗り気ではないな。何とも言葉では言い現わせない気持ちになる。


日本でもストラスブルゴでオーダー会が行われていて、その前は今は無き自由ヶ丘のピッティコレクションで取扱いがあった、MTM、今はHさんは葉山にてピッツェリア、直しもボチボチかな。なので結構前から日本には馴染みで知っている人も多いと思う。

とても良いサルトリアでストラスブルゴも信頼のおけるきちんとしたお店だろうから、作るのはオススメだ。
それにピロッツィの仕立てる服は雰囲気そのままに日本人の体型に良く合う。

僕は以前ソリートの事を書いた時に今のソリートなら生地代税込48万円位が妥当じゃないかって言ったけど、どちらかを作るのが良いのかと言えば確実にピロッツィと思う。どうせ高いお金払って仕立てるなら10年後20年後も着ていたいだろう、同じ頻度で着れば20年後の答えは明白じゃないかな。