アンブロージ Ambrosiやレスパーデ Le Spadeの次は。。。

今年の初めに日本の業界によってパンタロナイオが使い捨てられる日が近いだろうと書いたのだが、これは僕の日本の友人たちの話なのだが飽き始めたというか、無理して当人の体型に合わないものを着ていた為、ダサいと感じ始めたようだ。
彼らはAmbrosiや五十嵐トラウザーズなどを良く履いていた。
細いウエストにベルトレス、幅広のウエストバンド、長い持ち出し(中にはダブルなんてのも)、サイドアジャスター、2プリーツ、コインポケット、、、デフォルメされすぎて日本人の標準体型にこの凝縮感はちょっとてんこ盛り過ぎると思った。んなもんクラシックでも何でもないし、興味が無い人から見ればなかなかの滑稽さに見えるようで、良くネタになっていた。勿論体型的に合う人が着ていれ格好よく見えるのかも知れないが、このオプション全装備的な精神は一体本当におしゃれなのだろうか。
それを見せたいのだろうけどポロシャツやカットソーをインするのは止めた方が良い、誰がどう考えてもダサ過ぎる。
勿論流行に敏感な彼らは新しいものが提案されればまた飛びついて買うのだろう。

僕もパンツはいくつか作った。別に今流行りのベルトレスとかサイドアジャスターじゃなく、普通のパンツだ。アンブロージ(Ambrosi)、モーラ(Mola)、チェッラート(Cerrato)、ポメーラ(Pommella)、コラード(Corrado)などや日本では無名な下請け職人や、アンダーソンシェパード(Anderson&Sheppard)やフィットコンシャフツベリー(Whitcomb&Shaftesbury)、日本の尾作隼人Pantalonaio Osaku Hayato、、、上着と同様にパンツもスミズーラの方が履きやすいのは当然だが、中には僕には合わなかったものもあった。例えばチェッラートは見た目は綺麗だったが椅子から立つ時や足捌きなど余り良くなかった。
パンツをオーダーするのは自分の好みのシルエット・太さ・立ち姿での美しさ・履き易さや座り心地・動いた状態での美しさのバランスが取れるからだし、上着と違いパンツや靴は脱ぐ事はなく、しかも遅くまで飲んだりすれば下半身は結構浮腫んだりする。
そういうとこを踏まえて作ってくれるところじゃなければ、パンタロナイオとしては意味がないと思う。

ここ4~5年でアンブロージやモーラなんかも良く取り上げられていてアジア圏ではRTW(既製品)も売られている。モーラはレスパーデという名前や、アンティコパンタローネという名前で売られている。売れ行きが悪くなればいつも通り日本の業界が焼き畑農業式で完全に廃れるまでまた新しいパンタロナイオを作ったり探してきたり名前変えたりするのだろうけど。結果例えばボリオリを始め倒産した処も沢山ある。

アンブロージのRTWは税込みで伊勢丹で12万円、ブライスランズで9万円位、レスパーデはリングヂャケットやシャロンで5~6万円位、リングヂャケットは問題があって見切ってもう他に切り替えたんだったな。
しかし、2~3万円位の既製ブランドなら気に入れば買っても良いのかも知れないけど、こういう金額を払ってクセどりも膝位置も取られていないようなトラウザースは買わない方が良いと思う。

例えばレスパーデだとパターン上44サイズで股下70㎝、膝位置は半分の十字渡りから35㎝位置に取られている。
股下は1サイズ2㎝刻みで計算されているから48だと股下74㎝。
でも極端な話48でも小太りな165㎝股下65㎝の人も痩せてる185㎝股下85㎝の人も履くから全然合わないんじゃないかなと思う。クリースもクセ取りも何もないし、寧ろS字で位置がずれていたら逆効果だろう。
ときどきアンブロージの写真を見ると、多分既製だろうか、S字が合わずにしわくちゃになっていたりする。
レスパーデなんてモーラの近所の更に下職やおばちゃんたちが適当に作ってるパンツだから縫製も履き心地も良くないだろと思うし、何より雑にも程がある。大体モーラなんて小狭い3人稼働で限界の工房なんだから。
しかも最近は裾幅やシルエットが細いから体型に合ってないと余計に履きづらいと思う。無理に裾幅からのシルエットを作ろうとするから尻余りなったり、変な皺が入ったりする。
それでストレッチの化繊生地でオーダーするなどというのは、本当に馬鹿馬鹿しい。

採寸取りにゲージを利用するだけでスミズーラと余り変わらないようなクセどりやピンポイントで膝位置を取ってくれるMTMは良いのだろうけど、パターンから詰めるだけのMTMは上乗せでお金払うだけでRTWと余り変わらないから止めた方がいいんじゃないかと思う、その辺りはどういう形なのかはそのパンタロナイオやお店によってそれぞれなのだろうし、勿論耐久性の無い生地やリネンとかだからMTMやRTWでいいやって事もあるだろうけど。

ちなみにイタリアのサルトたちはパンツや靴には余り興味が無いようだ。
サルトリアの情熱は上物一択な人が多い。勿論サルトリアへ行く時は極力そこで仕立てたものを着て行くようにしているのだけど、前後の予定や急に思い立っての場合は仕方がない。で、どのサルトリアへ行ってもジャケットやコートなど上物はいい仕立てだなとか、それどこで仕立てたのかとか、見せてくれなどと言われるが、パンツや靴に関しては言われた事がない。パンツ屋に行っても聞かれない。興味が無いと言うかそこはそこそこのものなら良いと言う感じがする。
多くのサルトリアではカットはするが縫製はパンツ屋に出していたり、丸投げで出している所もある。どこも大抵堂々と外注してるから、時にはサルトリアで外注先のパンツ屋に会ったりもする。アンブロージ(Ambrosi)、モーラ(Mola)などは色々な所のパンツの下請けとして信頼あるパンタロナイオで、尾作の工房もVicktailorやDittosなどの下請けをしていた。だが例えばモーラなどはサルトに言わせると指定した通りに縫うのは素晴らしく得意だが、モデリストやフィッターとしての能力は低いという評価なのだろう。
アンブロージは以前はソリート、サビーノ、フォルモーサ、チャルディなどのパンツも手掛けていたがここ数年で4代目のサルヴァトーレがアンブロージとしてアジアトランクショーやRTWをやり始めて手が回らなくなったので、今は余り下請けはやっておらず、例えばソリートは今はモーラがやっている。モーラは訳アリで海外でトランクショーとか出来ないから仕方無いのだろうけど。理由は有名だ。

しかし実際にどれだけこういうパンタロナイオが売れているかといえばメディアが持てはやす程売れてないのが現状で、アンブロージなんて世界でアーモリー(The Armoury)くらいでしかまともに売れてないようだ。
五十嵐トラウザーズは作った事がないから履き心地は分からないけど、まず客のオーダーがダサすぎると思う。ショーツにインプリーツ、ベルトレスなど滑稽でしかない。なぜ五十嵐トラウザーズをオーダーする客はみなああいう極端で盛り盛りのものを作るのだろう。
マシン比率も高いので価格的にも生地代税込10万円以下なので他と比較して選ぶ人も多いのだろうけど無駄金だと思う。そもそも五十嵐トラウザーズ本人の着こなしが、個人的にはあんまりだ。ただ人柄は一番良さそうだ。尾作はビスポークは良いのだけど、あの性格だから下職が育たないのも分かるしMTMも酷いもんだ。

でも今はアジアはオーダーブームなのだろう、日本でも量販企業ですらどこもオーダーをやっている。
その中でアンブロージは下請け仕事を捨てモーラは安売り、彼らだけではなく多くのサルトリアがそうだ。本来の価値を守りつつ新しい試みやビジネスとしてやっているのなら良いとは思う。でもたまに工房を覗いたり実際話したり実情を見ると。。。
結局いつもの日本のセレクトショップのやり方で、焼畑農業のように売れるものを売り尽くして、売れなくなったら他を探すという方式だ。
そもそもこんな変なディテールのパンツを10年後に履けるのだろうか。と思うが、着れない方が業界にはいいのかもしれないな。

最早若い女の子のファッションと同じなのだろう。
ナポリで伝統的にパンツを作ってきたパンタロナイオを金になるうちに売り尽くして焼畑農業式に使い捨てる。

そのガムはまだ味がするのだろうか。。。