日本でオーダースーツを仕立てるならどこがいいか 4 前

書いていたら長くなったので前後に分ける事に。

先日日本でオーダーするならどこが良いかと相談された友人との後日談だが、その電話が来た1ヵ月位後に今度はどの生地で作ったら良いかと相談が来た。また朝一。。。
それこそ作る所にそれなりにバンチや持ち生地があるだろうから、相談して決めるか自分の1番良く着るものや気に入ってるものと似たものを選んで差替えれば良いとか自分だったらこういう感じで選んでるとか一頻り伝えたが、色々と話を聞くと実際何ヵ所か見に行ったようだがどうもバンチ状態だと仕上りのイメージが沸かないらしい、そして薦められる生地もピンと来ないらしい。
だから僕が選んでバンチ名と品番と画像を幾つか送れと。。。
納得しないまま流されて作るよりはマシか。

取り合えずビジネス用スーツとネイビーのジャケット、それぞれを春夏/秋冬、それに対して幾つか生地を選んでくれと。2生地ずつ選んでも8生地も選ばなければならない、適当に選んでそれで本当に作りに行って後悔されても嫌だから真面目に選んだが。

何と世話の焼ける友人だ。生地の好みなんてどこで仕立てるかと薦めるよりも面倒だ、最終的には仲の良いサルトリア3つへ見に行ったのだけど。

彼が幾つか行った所の話を総合するとイタリア生地より英国調のホーランド&シェリー(Holland & Sherry)、ドーメル(DORMEUIL)、スキャバル(SCABAL)、そこの持ちヴィンテージ生地がオススメで、秋冬ジャケット生地はロロピアーナのカシミアなどを薦められたようだ。

服も靴も車も時計も所詮はものだし、特に服や靴なんて消耗品だからそんなに拘る必要もないとは思う、靴マニアというかオタクと同じで生地オタクは一様にダサい人が多いと思う。

確かに僕も生地は買う。サルトリアしか来ないような生地屋やヨークシャーのハダースフィールドの倉庫なんかにも生地を買いに行った事もあり、生地ストックはコートまで含めると数えてないが100着以上はある。これは最高だとかドンピシャだと思った生地は何着分も買ったりする事もある。ヴィンテージや古い生地もあるが普通にバンチから気に入った生地があれば買ったりしている、同じ色目や用途なら良いものが見付かれば入れ替えたりもしている。

僕は普段フィーリングでそこまで深い事気にして選んだ事がないしお任せで作る事も多いし生地こそ趣味の話だから良く分からない。微妙な色合や素材・生地感とかビジュアル的な事なんて数mも離れたら分からんだろうし、質の良し悪しもそういう所に置いてあるものなら余程変なものや特殊なものを選ばなければ長く愛用出来るんじゃないかと思うし、良くないものを選ぼうとすれば当然止めてくれるだろう。
勿論TPO、ビジネス、夜遊び用、普段着なのかとか、生活スタイル、体格、髪の色や有無、瞳や肌の色、国や気候、陽の色、職種や環境や立場、好きな様式や調が英国やイタリアなのかとかでも仕立て屋だけでなくそぐう生地や色味も変わるだろう。
身嗜みや装いとはある種相手や周囲への配慮であり、日常では良くも悪くも人目を引くような服装はすべきでは無いと思う。会社や外にファッションショーしに行く訳ではないだろうし、そんなの成田コレクションに両腕時計や踏みそうに長い襟巻付け痴態晒す人達と同じスタンスじゃないか。そういう類の人達の物足りなさからくるであろう一足しは大体マイナスに作用する。

生地の良し悪しはそれぞれのポジションやに生活レベルやスタイルによっても違うのだろう。
例えばSuper200'sやスパンカシミアやビキューナの生地であったとしてもお金持ちで運動量も少なく服も多数あり1シーズン数時間1,2回しか着ない人なら、それは羽の様に軽く柔らかく滑らかで最高の着心地で10年後も大した劣化や型崩れもせず良い生地だと言うのかも知れないし、逆にサラリーマンで週1回1シーズン20回も着る人ならそれは最悪の生地、織りにもよるがSuper130'sでも悪い生地なのかも知れない、Super100'sが良い生地なのかも知れない。
価格を盛りたいショップ側からすると盛りやすい高番手生地にカシミア混などが良い生地と言われるかも知れない。余談だが1シーズン何m売らなければならないとノルマのあるメーカーの生地や繋がりで格安で仕入れられて定価で売れるものなんかも良い生地だと薦められる事があると思う。
そう言えば友人で日本のテーラーや海外サルトリアのトランクショーで良く作る(20ヵ所近く)人が居るのだけど、生地代を聞いたら現行もかなり盛ってあったりヴィンテージまで古くない持ち生地も通常の倍近く盛られていた所も幾つかあったな。
新宿伊勢丹に置いてあるヴィンテージのトニックやタイタンも尋常ではない額だな。

サルトなど作る側からすれば耐久性があり型崩れせず仕立て栄えする目附400gで目が詰まり打ち込みのしっかりしているものが良い生地なのかも知れない、故に自己満足的にそれが好きなサルトも多いが、好みでなかったり合わないのならそれに付き合う必要はない。
上物のサルトとパンタロナイオでも好む生地は違う。サルトリアによっても軽い高番手や目付のある生地が得意不得意などある、先日書いたアロイジオなどはSuper180'sなどの高番手でもその意匠や魅力を損なう事無く仕立てる技術がある。

実際ナポリ~ローマ辺りのサルトリアでオーダーされている服を見ると軽めの合物~合物程度で作られている服が多い、冬物のツイディーなものはたまにある、ミラノなど北イタリアの方へ行けば400g/m位や重めの英国調生地で作られている服も多い。

それに単純に目付なども体格によって対比というものがあると思う、例えば165㎝痩せと185㎝ガッチリでは同じ目付300g/mで仕立てても見た目も着用感も違う、4月春合物なら165㎝痩せには230g/m、185㎝ガッチリには280g/mが丁度良く同じ感覚なのかも知れない、1月冬コートなら530g/mと600g/mなのかも。
なので、生地先行で考えるよりまずは着用イメージや着たいシーンにおいて自分の体格に合うか合わないかなども考慮した方が良い。
もしその生地で作った人や写真を見て自分もそのように格好よく着る事がイメージにあったとしてもかけ離れた体系なら答えは違うだろうから止めた方が良い。極論似合ってないアニメキャラコスプレーヤーと同じだろう。
日本で割と小柄な知人がヴィンテージの500g/m近い生地で仕立てた服を着ているのを見た事あるが酷い有様だった、ジャケットは全体的にボテボテとしていてラベルやポケットやフロントが分厚くなり全てが鈍く野暮ったくなり、パンツは生地の特性上必要以上に太くせざる得ずしかもタック部分も分厚くなり、せっかく名サルトリアで仕立てたのにそこの良さは見る影もなかった、仕立て栄えがって。。。どこがと思った。
まあそのとき正直な感想を伝えたおかげか、彼も最近は目付ではなく着たいシーンに合わせて生地を選ぶようになったが。

しかしこういうヴィンテージ生地オタクは誰がどう考えても拗らせてるとしか思えない。そんなのサルト本人達だって着てないって事は本当に良いとは思ってないって事だろう、限度やバランスってものがある。あとそういう拗らせてる人は最早そこで作る意味ないだろうって感じに仕様や数値的な指定が多い傾向もあるな。実際聞くと取材的な事や客が持ってきてこの生地はどうだと聞かれれば仕立て映えがして良い生地だと形式的に答えるサルトもいるし、余程変な生地でなければ何でも良い生地だと言う。

生地の良し悪しの1つに原毛の質と量がある、着分に良質の原毛を大量に使っているという事。目付が同じでも紡績や織によって厚さは違うし、逆に同じ厚さでも目付が違う。Super150'sを使っていても低速織機で織られていてきちんと目が詰まっていて目付や強度やハリコシもあり仕立て栄えのするものあれば、ペラペラで耐久性もなく長持ちしないゴミもある。

目安としての目付やSuperは良いが、やはり実際にバンチや反の生地を折ったりギュッと強く握ったり引っ張ってみたりして生地の復元率や耐久性なども触ってみて確かめた方が良い、皺にならずに膝や肘などの支点の抜けや伸びが無い生地の方が良いと思う。

僕は生地の質感・素材・季節感・色柄・仕上の他にハリコシがあり仕立て栄えし、耐久性や動き易さなどのバランスが取れてるものを選ぶ事が多い。合物なんかも多いが、秋冬は重めの生地が多い、と言っても300g/m後半位までだけど。耐久性に関しては春夏秋冬4シーズン各3カ月間週1で着たとして12回、20年240回着れるであろう劣化や型崩れや摩耗など余り無さそうなものを選ぶ。

例えばバンチならイタリアや英国のサルトリアやテーラーに置いてある数より、日本のセレクトショップやテーラーに置いてあるもの方が多種多様で多い。持ち生地の反などだとフォルモーサの様に何千とある所もあるしサルトリアに置いある生地なんて耳無しやどこの生地か分からないものも多い、だが良い生地が多い。日本人はそのもの自体を自分の感覚やセンスで選ぶって人よりも前提情報を踏まえた上で選ぶ人、でないと選べない人やそう言われると選んでしまう人が多いのだろう。
しかし沢山のバンチの中から選ぶのは大変だと思う、例えばネイビーの合物生地を選ぼうとしたら何十の中から選ばなければならない、だから僕の友人もどれが良いのか訳が分からなくなってるのだと思う。
沢山のバンチや生地の中からそのテーラーやショップが、例えばネイビーの合物ならコレ、グレーのフランネルならコレが良いなどとブランド関係なくバンチから半分切って台紙にでも貼りオススメバンチなんか作ってくれれば良いのにとも思う、着道楽の人や服に重きを置いている人は生地を選ぶは楽しいのだろうけど、特に生地なんぞアレやコレやと悩みたくない人も居るだろう。

取り合えずスーツならユーロテックス(EUROTEX)、葛利毛織、テーラー & ロッヂ(Taylor & Lodge)、Hレッサー&サンズ(H.lesser&Sons)、ハリソンズ(HARRISONS of EDINBURGH)、フィンテックス(Fintex of London)、ジョン クーパー(JOHN COOPER)辺りから実際見て好きなの選べばと伝えた。
ナポリのサルトリアでユーロテックスとハリソンズを置いていないところはないだろう、定番中の定番だ。